第23回品川セミナー
霊長類学は「ヒトはどこから来たのか」「ヒトとは何か」「ヒトはどこへ行くのか」を、各種霊長類の比較研究から探求する学問です。霊長類の本来の特性を知るには野外研究が欠かせません。種によって生活環境や過ごしてきた歴史が異なるからです。歴史を知るには客観的な標識が必要です。最も優れた客観的な標識は現在ではゲノムといえるでしょう。生命誕生いらい連綿と受け継がれてきた物質で、過去をひもとくことができるからです。
私はゲノムを通して霊長類を研究してきました。個体のゲノム研究は飼育個体でも可能ですが、種の進化や環境への適応の状況を知るには、生息環境の情報を維持している集団の解析が不可欠です。私の研究室では、野外調査によって収集したゲノム試料(染色体や遺伝子)を用いて解析を進めています。これらの基礎研究の成果が「人間の進化」のメカニズムを考察するヒントとなります。霊長類の種の進化や環境適応について、最近の研究の成果をお話します。