11回品川セミナー

「傷だらけのヒトDNA
―放射線や紫外線に見るDNAの傷と生物の危機管理―」

平成2日(金)
7:30より

松本智裕(放射線生物研究センター、
教授・センター長)

小松賢志(教授)

ヒトを形作るおよそ1014個の細胞のそれぞれには、約2メートルに連なるDNAが格納されている。1つの細胞から2つの細胞が誕生するたびに、その中に格納されるDNAも複製され、2つの細胞に過不足なく分配される。また細胞の生涯を通して、傷ついたDNAは修復される。DNAの複製・分配・修復のいずれかに異常を来すと、生命情報を担うDNAの一部が欠けたり傷つくことにより、遺伝病や癌が発症することが知られている。本セミナーの前半では、細胞内におけるDNAの挙動を、特に複製と分配に注目して解説する。また後半では下記の観点から、DNAの修復について解説する。

原始地球に降り注いだ太陽紫外線はDNAに障害を及ぼして、揺籃期の生物の存続に重大な脅威を与えた。オゾン層破壊により再び増大する紫外線、あるいは発見後わずか百年の高エネルギー放射線に対して現代の人間の体に防御する術があるのだろうか。本セミナーでは、DNAを守る遺伝子の活躍や自爆死など巧妙な生物の危機管理について述べる。