第79回京都大学丸の内セミナー

デジタル・ヒューマニティーズと地域研究

平成2923日(金) 1800より

原 正一郎(地域研究統合情報センター長)

ヒューマニティーズ・コンピューティング(humanities computing)あるいはデジタル・ヒューマニティーズ(digital Humanities)は、情報科学と人文社会科学が接する研究分野です。その歴史は意外に古く、デジタルコンピュータの黎明期である1940年代における、Roberto BusaによるIndex Thomisticusまで遡ることができると言われています。これはデジタルコーパスの先駆けとなるものです。1980年代における主要な関心は、紙媒体の史資料をデジタル化することでした。1980年代後半になると、SGML(Standard Generalized Markup Language)の考案、デジタルテクスト記述法の標準化を目指したTEIプロジェクト(Text Encoding Initiative)の開始、さらにWebの普及などを契機として、単なるデジタルコンテンツ構築から、アーカイブ化、分析、研究、教育、公開などへと対象範囲を拡大してきました。


このような研究領域の発展に呼応するように、国際的にはAssociation for Computers and the Humanities (ACH)が1978年に、日本では情報処理学会の「人文科学とコンピュータ研究会(通称じんもんこん)」が1989年に発足し、情報学者と人文社会学者による学際研究の場として活動を続けています。これらの名称が示すように、最初のころはヒューマニティーズ・コンピューティングと呼ばれていました。しかし2000年代になると、狭い意味での人文社会科学の枠を越えて、情報社会の新しい知識基盤を形成するとの認識が高まり、デジタル・ヒューマニティーズと呼ばれるようになりました。国際組織としてはACHなどが中心となりThe Alliance of Digital Humanities Organizations (ADHO)が2006年に、日本ではJapanese Journal of Digital Humanities(JADH)が2011年に発足しています。

本セミナーでは、デジタル・ヒューマニティーズにおけるいくつかの重要な技術について、歴史的な経過に沿って実例をお見せしつつ説明いたします。さらに、情報学を文化資源の研究に活かしていく方法についての京都大学地域研究統合情報センターの事例を紹介する予定です。


  1. デジタル・ヒューマニティーズ

  2. 紙からデジタルへ

  3. データベース

  4. デジタルだからできること

  5. デジタル・ヒューマニティーズと地域研究